(自詩)夜のプール

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夜のプール

夜のプールで
水音だけ響かせ
泳いでいたのだ
足がつって
息苦しさに気が遠くなる
魚になりたかった

暗い水底どこまでも落ち
全ての境界があやふやになる
開放は絶望のかわいい双子
僕はだから水底を泳いだ
ターンしてまた掌が水を掴む
静寂の抱擁
どこまでも浮かぶように沈んでいく

やがて魚は冷え切った月と会い
ねえ、少し休んでもいい?
疲労で痙攣する背鰭を脱ぎ捨て
凍るような眠りに落ちる
捨てられたそれは虹色の夢だった
夜のプールにて

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20年くらい前か。
ぼろぼろに疲れていたんだけど、夜中のスポーツクラブ通いがやめられなかった。
そこは25時、つまり午前1時までやってるいかれたクラブで、閉館間際は当然のようにほとんど誰もいなかった。

そこでただ泳ぐというか潜水していたなずっと。
息継ぎをせずに潜っているといろんなことがどうでもよくなったものだ。ほんとぼろぼろだったな。

そしてその後すぐそばのバーにより酒を飲んだ。まったく健康的ではない日々だった。


この詩はでもそんな自虐の話じゃなくて(まぁそれもあるのだろうけど)、ほんとあの時感じたなんともいえない不思議な静けさ、水音、そして呼吸できない苦しさを切り取りたかった。
今も不思議な光景のように思いだす。もうあのスポーツクラブはなくなった。たまに誰もいない真夜中のプールで泳ぎたい気持ちが湧く。

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