Englishman in New York/ Sting

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何を言われようと、自分らしくあれ

めずらしくおしゃれな曲でも紹介しようか。
といってもこの曲は有名だし、スティングだし、あちこちで耳にするし、紹介するまでもないか?
といってもといっても好きな歌だし書きたいこともあるんすよ。
「ナッシング・ライク・ザ・サン」(1987)収録。

この曲はアメリカニューヨークに住むイギリス人の話だ。
イギリス人のなかでも失われつつある英国の紳士というところにニューヨークとのギャップがある。

”コーヒーは飲まない、お茶をいただこう”
”あなたはわたしのアクセントに気づくでしょう?”
”五番街をわたしはいつも杖をついて歩いているんだ”

ちなみに歌詞にある”take tea”はアメリカでは使われず(drinkとかhave tea/coffee)、イギリスでも現代ではあまり使われなくなっているそうだ。失われつつあるクイーンズ英語だ。

この歌はまわりに同化されないものをニューヨークの英国人としてうたっている。
それはただ異国人というだけではない。
英国人で俳優だったクウェンティン・クリスプを歌ったものだ。
クウェンティン・クリスプはこのMVにも出てくる。洒落て雰囲気のあるいかにも英国風なご老人だ。


ところどころで映る彼は、品のいいおばあちゃまのようにも見える。
彼はゲイだった。今でこそゲイだなんてあまり意識なく言うけれど、その昔の彼らの時代はまだイギリスではゲイは重罪の名残があった。犯罪だったのだ。
いまよりもさらに差別的なあつかいがあったろう。
この歌のサビの
I’m an alien,  I’m a legal alien
のエイリアンはもちろん異国人という意味もあるが、わざわざlegal(合法的な)をつけるのはそういうセクシャリティなものの歴史的過去も指してるからだろう。

だがこの歌はただセクシャリティー差別への抗議や擁護の歌じゃない。
出自国、セクシャリティー、人種、価値観そういうものの違いによって、いつも異質なものとして疎外される者がいる。しかしこのニューヨークの英国人のようにそれを受け入れ、さらに同化せず、自分自身をもつことをこの歌はたたえている。
誰もが自分以外の異質を嫌う。自分との違いについてよく考えようともせず、切り離したがる。
それはブルーハーツの「青空」でもでてくる。

そしてそんな世界で他人に何を言われようと自分自身でいるということが、どんなに困難で孤独であることか。
でもBe yourself no matter what they say!
差別をどういっても差別はある。なくそうとしても差別はある。人間は寛容ではない生き物だ。歴史に問い詰められるまでもなく、そうなんだ。
それでもBe yourself no matter what they say これがこの歌のすべてだ。

曲はジャズ風。ジャズミュージシャンがバックを固めている。イントロからのソプラノサックスが印象的。
リズムはレゲエ。ちなみに「ジャマイカン・イン・ニューヨーク」ってカバー曲もある。
そして一拍おいて歌うたんたんとしたメロディ。
がらっと変わるBメロ。このパートはポリスを彷彿とさせる。

何度聞いてもいいね。このMVのように街の雑踏を歩いている気分になる。

スティングは様々な音楽をやる。
ポリスでドゥドゥドゥダァダァダァやシンクロニシティを歌い、こうしてジャズを歌う。

それでどう変わろうとこれだけ惹きつけられてしまうのはスティングのメロディセンス、編曲センスはもちろん、彼の声や歌い方が飛びぬけているからだ。
彼が歌えばどんな歌もスティングになるし、どこで歌ってもスティングだとわかる。もちろんベースも。唯一無二のアーティスト。

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