Hurt /Johnny Cash 【訳詞】

この記事は約5分で読めます。

僕がジョニー・キャッシュを知っているのはボブ・ディランを通じてだ。ボブ・ディランと60年代の末にセッションをしたというのが伝説のように書かれていて、それでその名を知った。
しかしさほど聞くことはなかった。アット・フォーサム・プリズンはちょっといいなと思ったけど、やっぱり古すぎた。カントリーやロカビリーすぎて、あまり追わなかった。やたらギターの位置も高すぎたし。
ジョニー・キャッシュは2003年に71歳で亡くなっている。

今回たまたま見つけたのはその亡くなった年の2003年にカットされた「Hurt」だ。
これは亡くなったからのメモリアルとして出されたのではなく、その前年に発売されたアルバム『American IV: The Man Comes Around 』からのシングルカットで、つまり最晩年の曲だ。
原曲はNine Inch Nailsの名鬱盤『The Downward Spiral』に収録されているこれまたまさしくダウナーな名曲のカバーである。

正直、えーナイン・インチ・ネイルズジョニー・キャッシュ(ロカビリー歌手のイメージのまんま)は違うでしょー、ボブ・ディランでもインダストリアルは違うと思うしー、無いわーって思ってた。
ほんと人生反省だらけだよ。

ユーチューブで見て、なんともすごかった。
若いジョニー・キャシュ(といっても40前後か)の姿しか見たことないのでMVのゴッドファーザーマーロン・ブランドのような佇まいもくるものがあったが、この曲の世界観がジョニー・キャッシュの歌にはまりすぎてた。
慌ててアルバム『American IV: The Man Comes Around 』も聴いたが、すごい。攻めてる。70歳で、しかも最後のアルバムがこれか、ジョニー・キャッシュは偉大だったのだな(いまさら)。不勉強を恥じた。

さあジョニーキャッシュの2003年のナンバー、Hurtを聴いて(見て)もらおう。

ジョニー・キャッシュは薬物中毒者およびアルコール依存症だった。それもハードな。
いろいろな事件を起こしたし罪も犯した、自殺を図ったりもした。
なんども薬物からの更生と中毒を繰り返した。

そしてこの歌は薬物中毒者を歌っている。晩年キャッシュがこれを取り上げたことは大きい意味があるのだろう。若かりし日のキャッシュも映像にありなんともこのMVは感慨深いものになっている。

ジョニーキャッシュはこのアルバムを作ったそのすぐ2003年の5月に35年連れ添った妻のジューン・カーターを亡くす。
その後4か月でキャッシュは60曲ものレコーディングをおこない、同じ年の9月に彼女を追いかけるように旅立った。

Hurt

I hurt myself today
To see if I still feel
I focus on the pain
The only thing that’s real
The needle tears a hole
The old familiar sting
Try to kill it all away
But I remember everything

今日自分を傷つけた
まだ感じるのか確かめるため
痛みに集中する
それだけが唯一のリアル
針が穴を引き裂く
古い馴染みの刺し傷さ
全てを消し去ろうと試みるが
しかし全てを覚えている

What have I become?
My sweetest friend
Everyone I know
Goes away in the end
You could have it all
My empire of dirt
I will let you down
I will make you hurt

俺は何になっただろうか?
親愛なる友よ
全ての者は知る限り
最後にはみな去っていく
君は全部手にいれることができるだろう
俺の汚れた王国を
俺はお前を失望させる
君を傷つけるだろう

I wear this crown of shit
Upon my liar’s chair
Full of broken thoughts
I cannot repair
Beneath the stains of time
The feelings disappear
You are someone else
I am still right here

俺はくだらない王冠をかぶる
偽りの椅子の上で
壊れた考えで満たされ
もう元に戻すことは出来ない
汚れた時間の下
感情は消え去っていく
君は他人だ
俺はまだここにいる

If I could start again
A million miles away
I would keep myself
I would find a way

もしもやり直せるなら
100万マイル先から
俺は自分を保ち続けるだろう
俺は道を見つけられるだろう

このMVも非常に感傷的だ。
若かりし頃、奔放だったったジョニーキャッシュが映る。
What have I become?俺はなにになれたろうか。
奥さんのジューン・カーター・キャッシュが傍で見つめる。
後半に大きな音になっていく単音。その一定のリズムが胸に迫る。
キリスト像。十字架。
この歌は人生の最後の悔恨と懺悔の歌だ。

そして麻薬を打つための針が十字架の釘となり打ち込まれる。
そして静かにピアノの蓋がしめられる。

何度も見てしまうよ。

しかし原曲を超えたなんて記事も読んだが、僕はそうは思わない。これは違う人間の人生だ。
ナイン・インチ・ネイルズhurt

と、この記事を書きながらYOUTUBEサーフィンしてたら、デビッド・ボウイとの共演もみつけちゃった。初めて見た。ボウイかっちょええ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました