溺れる者よ、この手を握りなさい
初期のU2には特に好きな曲が多い。
さらに特に特にアルバム「War」に収録の曲はどいつもこいつもたまらなく好きだ。
その中でも特に特にたまらなくたまらなく好きなのがこの曲「Drowning Man」
この曲は死ぬまでにまとめ上げたい僕のAll Time BEST100のTop20、いやTop10には必ず入るだろうと。
つうかほんとにAll Time BEST100なんてほんとに選びきれるのだろうか。
この曲を初めて聞いた少年のころ(高校に上がったか上がらないかの時ではないか)何故ここまで心を鷲掴まれたのかわからない。
Take my hand~ っていうのがおセンチだった気持ちにはまったのかな。
U2を知った「ニュー・イヤーズ・デイ 」、それが入っていたアルバム「War」はなんせ素晴らしい1枚だった。
ニュー・イヤーズ・デイ、サンディ・ブラッディ・サンディ、トゥー・ハーツ・ビート・アズ・ワンと名曲目白押しだ。セコンド、40も捨てがたい。
しかしライク・ア・ソング、そこからこのドラウニング・マン、ザ・レフュジーの流れこそがこのアルバムのクライマックスだしすごいところだ。そう僕は思うな。
ドラウニング・マンは徐々に近づいてくるように音が大きくなってくる(フェードイン)なんとも不思議なリズムとギターの音色で始まる。
ブラシで叩いたタイコの音、固く高くテンションの高いギターのカッティング、もう一つボリュームコントロールで引き延ばされたように響くバイオリンのようなギターの音。
その頃の僕には聴いたことのない音楽だった。あとからこの雰囲気は伝統的なアイルランド音楽からだということを知るのだが、いやぁ当時はなんだこれって思ったな。
それまでの力強い、それでいてなんか哀愁と冷気を感じるようなイントロから一転して歌には<Take my hand 手を握りなさい>優しさというか、切に願う祈りのようなものをぶわーっと感じた気がする。
なんとなくリズムも宗教的、呪術的。壮大でもある。
少年だった僕には歌の意味を知るよしもなく(勉強しろ)、たださっきから言ってるTake my handの繰り返しとHold on, hold on tightlyの繰り返しだけでなんか救われる気がしたなぁ。ジーンと響くものがあったんだ。
そしてその印象は今も変わらない。聴くたびになにか熱いものがこみ上げる気がする。
ラストにかけてのバイオリンのメロディも効果的だ。弾いているのはのちにThe Waterboysにはいるスティーヴ・ウィッカム。サンディ・ブラッディ・サンディのも彼だ。
ドラウニング・マンDrowning Manというのは溺れる人、ということだそうで溺れる人は藁をもすがるというか、Take my handこの手を握りなさいってことなのだな。
この歌には二つの思いがあるそうで、一つはイエス・キリストが手を伸ばすという宗教的な話だ。
Rise up, rise up
With wings like eagles
You run, you run
You run and not grow weary
立ち上がるのだ
鷲のような羽を広げて
走れ、走れ
あなたは走り疲れることはない
という歌詞は旧約聖書イザヤの書からの引用だそうだ。
そしてもう一つの思いは、以前「Pride」のとこでも書いたのだけど、この曲はU2のメンバー、不動のベーシストであるアダム・クレイトンを救おうとする歌であったのだ。
アダムはアルコール依存症に苦しんでいて、しかもこのアルバムを制作時にはメンバーとも確執が広がっていたということだ。それに対し手を差し伸べる歌だとどこかに書いてあった。
まぁそういうのも抜きにして感動的な曲だと思う。
Take my hand
You know I’ll be there
If you can I’ll cross the sky for your love
とか
Take my hand, take my hand
Hold on, and hold on tightly
Hold on, hold on tightly
To this love last forever
To this love last forever
とか
ボノの切実な歌い方と相まっていつまでもひたって聴いていられる感じだ。フェードアウトしちゃうけど。
おまけでこれもどうしても聴いてもらいたいカヴァー。
アンケ・ヴァン・ガースバーゲン。
彼女はThe Gatheringというヘヴィメタ・バンドのヴォーカルだった人で、鼻ピアスでタトゥばっちりムチムチの迫力だったのだが、だいぶイメージが違う。なんともユーモラスで楽しげ。
しかし難点は曲がなかなか始まらない。英語がわかればなんとなく客とのやり取りがいい感じなのだがいかんせん長い。3分50分くらいまで飛ばすとやっと始まる。独りオーケストラ。独り合唱団。
コメント
[…] で見たヤツの背中を、俺は一生忘れない」後にボノは語った。 アダムとボノの絆はアルコール依存症で苦しむアダムに向けた歌「Drowning Man」でも強く感じるが、鳥肌が立ちそうな話だ。 […]
私もニューイヤーズディに魅かれてCDを購入しましたが、この曲が一番好きです。何度も何度も聞いて、30年以上経った今も数日に1回は聴いてます。歌詞を見て、こういう歌だったのだと改めて感動いたしました。まさかイエスの慈愛に満ちた感性を表現する歌だったとは驚きです。ちょっと目に涙が溜まりました。ありがとうございます!!!