ルトガー・ハウアーが亡くなった。オランダ出身の映画俳優だ。
今日は音楽じゃなく、この俳優のことを。

2007-01-28 12:29:43 RUTGER HAUER Rutger Hauer
かっこいい俳優だった。片ほほを上げるようにニヒルなわらい。彫りがふかく、知的でいつも何か企んでいるようで、それでいてユーモアと無常観をたたえたような眼差し。
彼を最初に見たのはリドリー・スコットの名作「ブレードランナー」だ。
役のロイ・バッティは人造人間。アンドロイドでありながら自分はどこからきて(生)、どこへいくのか(死)という人間そのものの悩みを圧倒的な存在感をもって演じた。
あの深く青い目、怒り、悲しみ、人間以上の存在、遠吠え、主役のハリソンフォードよりはるかにはるかに当時多分まだ中学生だった僕には強く心に残った。つかあのクライマックスの雨のシーン、彼の言葉はずうっと忘れようもなく、僕の映画史に残る。
「ヒッチャー」という映画も印象深い。
これはストーリーもクソもなく、ヒッチハイカーを拾ったらそいつがとんでもない殺人鬼でただただ逃げられないっていう・・
そのヒッチハイクの殺人鬼、ヒッチャーを演じているのがルトガー・ハウアー。
この映画、彼が殺人鬼やらなかったらどうなってたんだっていうほど、話の中身はない。なんせ動機も背景も説明どころかなんもなく最初から最後までルトガーの理不尽さだけだから。
しかし逆に彼のとんでもなく狂っているキャラクターによって、まったく忘れられない映画になっている。正直彼しか思い出せない、そんな映画だ。
なんせ怖い。なんだかわからないくらい怖い。悪夢そのもの。人間じゃない。これもルトガー・ハウアーの代表作だ。
「レディホーク」の夜になると狼になる黒騎士。やっぱり人間ではなかったか。。
中世ファンタジーの世界も彼の彫りの深い顔と雰囲気にあっていた。ちなみに鷹は彼の恋人。
「ノッキン・オン・ヘブンス・ドア」ではルトガーハウアーはほんのちょっとしか出ない、というか知らないでみてて最後に出てきて驚いたのだが、すごくいいマフィアのボスでルトガー好きには外せない。すごくいいマフィアというのはおかしいが。この映画は僕の大オススメ映画でもある。
このマフィアのボスのセリフも「ブレードランナー」のあの長ゼリフなみにすばらしい。
またこれもあとから知ったんだが、まったく予算のない製作者がルトガー側に出演交渉をするとマネージャーが1日10万ドルを要求した。とても払えないとあきらめかけたところ脚本を読んだルトガー本人が「マネージャーの話は気にするな。出ると決めている」といってギャラ関係なく出たという話である。
それこそ「ブレードランナー」と「ヒッチャー」の強烈な印象で悪人のイメージが強く、刑事役とかはピンとこなかった。
でもほんとはいい人だろ?
スクリーンの中で僕の中では1,2位を争う名優だった。
2019年、今年は奇しくもブレードランナーのロイ・バッティが雨の中に動かなくなった年じゃないか。やはり彼はロイだったのか。
今夜は「聖なる酔っぱらいの伝説」でも見て眠ろう。
眼の回りを赤くしたルトガー・ハウアーのなんとも深く不思議な人生の話だ。
これもとてもいい映画だよ。
鳩を手放してしまったが、200フランは握られたままだったかなあ。
ご冥福を心から祈ります。
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