そんなとこにぶら下がったら危ないよ
これはガツンと来た曲だ。
まず怖い感じのやつだけどMVを見ながら聞いてもらおうか。
曲のサビはきっとみんな聴いたことあると思うよ。あるCMでかかってる。それはそれでびっくりなんだけど。
さてどっから書こうか。
いろんなとこ書きたくなるんだけど、まずはインパクトのある映像からいくか。
殺風景にもほどがある部屋の中、肌もあらわなように見える(見ての通り肌色のレオタードを着ている)少女が前衛的な踊りを踊る。すっぽんぽんのロリっぽい子があらわに踊る一見やばめなやつ。
この少女はマディー・ジーグラー。当時12歳。ロリじゃん。
一発撮りのような長回しで一曲を独創的なダンスを踊り切っている。
なんだよこれ、すごすぎるだろ。天才。
その表現力。幼くもあり、妖しくもあり、葛藤があり、狂気があり、あふれ出す感情、すべて一人で表現しきっている。
そのカッコも相まって元祖のブレードランナーの女レプリカント、ダリル・ハンナを思い出した。退廃的と虚無、大きな悲しみを感じた。
本人も自信があったようで「この曲をわたしみたいに踊れる人はいない」と言っとりますね。
この歌っているアーティストはSia シーアというオーストラリア人。
シーアの何曲かのビデオにこの女の子は出演しており、どれもインパクトのある踊りを見せている。そのおかげでダンサー マディーちゃんは一躍脚光をあびた。
シーアの歌唱力、そしてマディー・ジグラーの独創力、二人の表現力はすごい。この声とダンスは切っても切れない感じがたしかにするね。
この曲も世界的に大ヒット。グラミー賞でも数々の部門にノミネートされ、2014年はいろいろな最優秀ビデオ賞や最優秀振り付け賞をとった。
サビのところCMで聴いたことあるでしょ?ディオールのCM。
このサビもインパクトあるよね。CMも好きだ、映画のワンシーンみたいで。
ナタリーポートマンがめっさいいよね。それで「AND YOU, WHAT WOULD YOU DO FOR LOVE?」(それで、あなたは愛のために何をするの?)なんて言っちゃうんだ。めっさかっこいいよね。
曲とCMを合わせてみるとすごくドラマティックで美しいのだけど、歌詞を考えてみると意外だぞDior。
Party girls don’t get hurt
Can’t feel anything, when will I learn
I push it down, push it down
I’m the one “for a good time call”
Phone’s blowin’ up, they’re ringin’ my doorbell
I feel the love, feel the love
1, 2, 3, 1, 2, 3 drink
1, 2, 3, 1, 2, 3 drink
1, 2, 3, 1, 2, 3 drink
Throw ‘em back, till I lose count
パーティガールたちは傷つかない
何も感じないものよ、なのに私はいつ学ぶの
感情をを押し込んで、押し殺して
私こそ都合のいい女
電話が鳴ったりドアベルが鳴ったり
そんなものに私は愛を感じる、愛を感じるの
ワンツースリーワンツースリーで飲むわ
ワンツースリーワンツースリーで飲むの
何杯飲んだかなんてわからなくなるまで
主人公はかなり享楽的だ。毎夜のお祭り騒ぎに自分が都合のいい女と自覚しながら参加していく。
しかしそこは孤独と葛藤の嵐だ。嫌悪しながらも抜け出せない日々。
へべれけドリンカー。
そしてCMでも使われるサビ。劇的なパートだ。
I’m gonna swing from the chandelier, from the chandelier
I’m gonna live like tomorrow doesn’t exist
Like it doesn’t exist
I’m gonna fly like a bird through the night, feel my tears as they dry
I’m gonna swing from the chandelier, from the chandelier
シャンデリアからぶら下がって揺れる
明日なんてないかのように生きているの
夜通し鳥のように飛びまわれば私の涙も乾いていくのを感じるわ
私はシャンデリアにぶら下がって揺れるの、シャンデリアから
おやおやシャンデリアからぶら下がるとは、はちゃめちゃやな。
まさにパリピって感じ。
一説にはシャンデリアからぶら下がるっていうのは死にたいということをイメージしているらしい。
でもどちらにしてもDiorのイメージとしてはいいのかい?
このシャンデリアにぶら下がるはただ首をくくるってことじゃない。ましてバカ騒ぎを楽しんでるわけじゃない。
それは1,2,3からの歌の劇的な変わりようからわかる。それまでのたんたんとした、流されてく日常から感情的な叫びになる。
もちろんシャンデリアにぶらさがるっていうのは、そういう絶望や悪ふざけも含ませているだろう。でもあるのは生への渇望だし、今の自分を変えたいのに変えられない苦しい葛藤、そして葛藤があるということはわずかでも明日への希望があるからと思うんだな。
ほんとに心が死んだらなにも感じなくなる。
なんせここのメロディにしても歌唱法にしても激しく情熱的でそして力がある。
自覚があり渇望があるなら、きっと夜は明けるよ。囚われているうちには信られないだろうが、明けない夜はないっていうのはほんとう。出口はあるどこかに。
いろいろ見てみると歌っているSia自身アルコール依存、ドラック中毒の時期が過去にあったらしいね。そういう歌なのかな。僕も共感するところがあるんだ。
この映像の肌色のレオタードはもちろん裸の状態、パーティーじゃない素の心をあらわしているだろう。そして大人ではなく幼さの残る少女に表現させているのもそうだ。
このビデオにロリっぽくてしかもヌーディで不謹慎だという非難の声があったそうだが、その込められた意味を考えれば全く見当外れだし、そういう目でみるほうがそういう性向があるということだと思うけどな。頭つかってない非難だよな。
DiorのCMの中でも「愛してる」という男にナタリーポートマンが強く「証明してよ!」とやりあうシーンがある。桟橋から海に飛び込んだり。
「あなたは愛のために何をするか?」
つまり日々あたえられた刺激や囚われた状態で満足するものや流されていくもの、華やかさの裏にある葛藤や苦悩に目をそらすものにはDiorはふさわしくないというのだろう。フランスらしいよね。
しかし色っぺー
この曲の主人公はまだもがいている最中。投げやりな生活を変えられたわけではないんだな。
今夜を乗り切れば、今夜を乗り切れば
朝が来るのを恐れながらすがっている。
そんな魂の叫びに、この引き込まれるようなダンス。DiorのCMも好きだけど、このMVの圧倒する世界にガツンとやられたんだ。
ところで土屋太鳳さんもマディーちゃんの影響をガツンとうけて、Siaの楽曲で激しい踊りを踊っている。マディーちゃんぽいけど、残念ながら肌色のレオタードじゃない。
まぁ余談だけど。
またこれも余談だけど、このマディーちゃんが男の子とダンスの演技でキスをする練習をするビデオがあった。これがファーストキスだから大騒ぎ。ほほえましい、いや悪趣味か。1:40あたり。
余談だけど余談だけど。


取り残された男の子の顔(笑)
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